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看板のないレストラン

  

 ナビで向かって「到着しました」の案内にもかかわらずそれらしきレストランが見当たらず、ナビの検索を間違えて設定してしまったかと思った。看板がなく小さな入り口らしきものを見つけ、ここかなって入っていくとそこには緑が溢れ、人懐っこいお店の方の笑顔があって、安堵とともになぜか前にも来たかのような、“ただいま”って言いたくなるような感じだった。 

 スタッフルームやカルテの保管場所が手狭になり、ここ数年はなんとかごまかしてきたものの、いよいよスペースがなくなってきた。開業して2年目で訳もわからず増築した。大きくなっていくことがいい歯科医院になっていることと勘違いをして、大きく見せることが、ただの自己顕示欲だったことに気がつくこともなく。13年経って何もわかっていなかった自分を振り返りながら久し振りに医院の設計図を眺めている。街中に一つも看板を出さないことを開業当初から決めていた。隠れ家的な歯科医院で来てくれた目の前の方に伝わればいいと。実際には求めていたことと違うと失望させてしまったことも、結局は救えなかったこともたくさんあったし、今も逃げ出してしまいたくなる時があります。でも求めてくれる人がいる限り、それに答えたい。時々弱音を吐きながら、目もしょぼしょぼになりながら。

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