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才能に嫉妬

 藤が丘にあるカフェ”青猫”でベーシストの鳥越啓介さんのコンサートがあった。椎名林檎さんのコンサートで独特の雰囲気で人を威圧することなく、目をつむり、楽しそうにコントラバスを弾く姿に魅了された。ギターでさえコード進行から先に進めなかった私は、音楽家に対して手放しで尊敬の念を抱き、もし生まれかわれるのならピアニストか、チェリストかと妄想してやまない。

 ”琴線に触れる”とはまさしくこのことで、4本からなる弦の音色は私の心の糸に優しく触れた。体調がすぐれず行くのをやめようかと思っていたが、娘とあと何回コンサートに行けるだろうと想像したらすぐに考えを変えた。結果、演奏が始まって一番前のめりになっていたのは私で、熱もだるさも忘れていた。

ベースだから主役ではない。でもなくてはならない。音に深みや強弱をつける。野球でいうと4番でエースに憧れたことはなく、9番セカンドに興味があり、サッカーで言えば10番キャプテンは荷が重く、7番ボランチに生きがいを感じていた。

それぞれで進む時間は違っていいのだ。多様性の中にしか面白みはない。だから誰かと同じであることを心底嫌い、変化が好きで、相手も認めるが、自分も認める。自信がなく、自尊心の育ちにくい時代なのかもしれない。コーヒーの苦味とジャズは雨の日によく似合う。音は跡形もなく消えてしまったけれど、鳥越さんの才能に嫉妬を覚えたけど、確かに満たされた夜だった。今朝、久しぶりに夢も見ずにぐっすり寝むれたことに自分で驚いた。昨日は夢だったのかも?

 

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